いきなりだが、親父の話である。

UWに限らず、フェチが遺伝するとは思えないのだが、
私の場合、どういう因果か、
親父がそうだったのだ。しばらく前に亡くなってしまったが、
親父のビデオコレクションはかなりすごかった。
30年前のビデオデッキを見たことがあるだろうか?
VHSなのだが、まるで巨大なカセットデッキのような
デザイン、3倍モードなどなく、
なぜかアフレコモードがあった。
もしかしたら業務用の機械だったのかもしれない。
まだ、一般家庭でビデオなどほぼ皆無の時代に
入手したのだそうだ。
親父の話だと購入価格は35万円
テープは120分のものが2,000円以上したらしい。

私が物心ついた時それはすでに使い込まれており、
親父のUWコレクションは120分テープ50本以上
あったと思う。

「俺は南の島とかさんご礁とかが好きなんだ。」

親父はそういっていたが、UWフェチだったのは、まちがいない。
コレクションを見る限り女性が泳いでいないものはほとんど
見当たらないからだ。当時はインターネットなどなかったわけだし、
親父はそんな世界があるなんてことは死ぬまで知らなかったはずだが、
世界中に同好者が少なからず存在していたことを知ったら
さぞ喜んだに違いない。

親父は特に隠すでもなくかなり堂々と母や私の前で
コレクションを鑑賞していた。
おそらくUWフェチの自覚と認識が希薄だったのでは
あるまいか?
親父とは生前、そのことについて一度も話すことは
なかったので、本心は、結局わからずじまいなのだが。

さて、私はというとそういう事情で物心ついたころから親父の横で
コレクションをいっしょに鑑賞していたわけだ。
小学生くらいまでは別になんとも思わなかったのだが、
中学生の頃、突然、目覚めてしまったのである。
きっかけは今となってはよくわからない。

強烈なインパクトとして残っているのは
「SEA HUNTER 海の殺りく者」という古いドキュメント映画だ。
人食いザメの泳いでるような物騒な海でビキニ姿の女性がウツボに餌付けしたり、
マンタと遊泳したりしている姿にそそられたのはよく覚えている。
(親父は映画のパンフレットまで所有していた。どこで見つけたんだ?)

気がつくと親父や母親の留守を狙って親父のコレクションを
こっそり鑑賞したり、自分で番組をチェックしたりし始めた。
妹や友達の女の子とよくプールへ行くようになった。
母親は不思議がっていた。それまではどちらかというと
泳ぐのが嫌いな少年だったからだ。

親父は「ときめきマリン」「DoSports」は言うにおよばず、
「UKIUKIダイビング」「世界の海世界の島」「南十字星の島々」
さらにこれらの番組の前身である「VIVA!マリン」までほぼ、全放送分
コレクションしていたし、エスターウイリアムズをはじめ、
古き良きUW映画やその他の番組を大量にエアチェックしていたのでネタには
困らなかった。

親父が亡くなったときは泣いた。仲は良かったし、まさか
あんなに突然の死が訪れるなんて夢にも思ってなかったからだ。

かくして、主人を失ったコレクションは
そっくり私が受け継ぐことになった。
今もラックに並んでいるのだが、相当古いビデオなので
いい加減デジタル化しないと劣化を通り越して腐ってしまう。
ビデオデッキが壊れているので取り込めないのだ。
いまさらビデオデッキ買うのもなんかいやだし。

私はネットを始めてUWの同好者が考えてたよりも
ずっとたくさんいることを知った。
親父は死ぬまでインターネットを
したことがなかった。
私としては本当に残念に思う。
生きてほしかった。

大いなる遺産を遺してくれた偉大な父に
冥福あれ。
貴方の魂は息子たる私に受け継がれ、
こうしてインターネットを通じ、
世界に広がっていくであろう。