なんというのか…私がおかしな子供であったのは
間違いない。
自分の立っているところを真剣に考えてしまうのである。 

「自分はどこから来てどこへ行くのか?」

「自分の存在するこの世界はどうなっているのか?
自分の意識や肉体はこの世界でどんな意味を持っているのか?」

哲学者や求道者じゃあるまいし、こんなことを真剣に問う子供は
やはり異端であろう。
両親は相当心配したらしい。
頭の具合は大丈夫なのかと本気で疑ったかもしれない。
そんな私が小学生の時、興味深い言葉に出くわしたのだ。

「宇宙は膨張しているらしい。しかも四次元的にである。」

いわゆるビッグバン宇宙論という奴だ。
原初の宇宙は想像を絶するような超超高熱&高密度の火の玉であり、それが
突然はじけて今の宇宙に広がったという説である。
小学生の私に衝撃が走った。
壮大だが、なんとも無茶苦茶な話ではないか。
大人たちはこんな途方もない話を本気で信じている
わけなのか?

驚くべきことにどうやら本気で信じているらしい。
現在の宇宙論はビッグバンなしには
語ることはできないことばかりなのである。
どうやら膨張していないとあらゆる事象が説明できなくなる
らしいのだ。
まったくホントになんてこった。

「それじゃその火の玉はどこから湧いたんですか?」

当然の疑問である。小学生の私は早速、次の日、先生に聞いてみた。

「あ〜それはね、誰にもわからないことなんだよ」

へ?おいおい、そんな無責任な話があるのか?
そんだけの話をぶち上げておいて
肝心なところがまったくわからないとはどういうことだ?
話をぼかすにも程があるだろう?
いったい我々の宇宙はどうなっているのだ?

中学生の時、科学教師に聞いてみた。

「宇宙が膨張してるならその先はどうなっているんですか?」

愚問である。私は当時、宇宙は風船のごとく
3次元的に膨張しているものだと思っていたわけだ。

幽霊や妖怪は恐れなかったが、
夜空を見るたびなにやら空恐ろしくなった。宇宙の果て…
光速で膨張する宇宙空間…
その先に無限に広がる虚無の空間…
それが当時の私の宇宙のイメージだった。

しかしどうやらそんなものは存在しないらしい。
虚無の空間が存在しないというのもおかしな話だが、
なにもない無限の空間などというものはそもそも有り得るだろうか?

「我々の宇宙は閉ざされた有限の空間であり、
四次元的に膨張している。」

そんな説明で科学教師は逃げた。
迷惑なガキだと思われたかもしれない。

四次元的に膨張?なんのことやらさっぱりわからなかったが、
どうあれ宇宙が誕生する以前には必ずなにかがあったはずである。
図書館に通っていろいろ調べてみた。
しかし、中学生には難解な本ばかりで満足のいく解答は得られなかった。
わかる本もなんというのか、その問題については解答を拒絶しているのである。

「それは神の領域であり、私は解答を拒否する」

高名な科学者や天文学者までがそんな無責任なことをほざいてやがるのである。
お前なあ、学者だったらも〜ちょっと頭使って考えろよ?
お前らが考えてわかんないことなんかこの世にあるのかよ?
あと俺にわかるように説明してくれよ。お前らの話は
なんだか難しくてよくわかんねーよ。

そんなことをブツブツ言いながら図書館を徘徊していると
漫画の本に出くわした。
タイトルは忘れたが「よくわかる宇宙の謎」みたいな
本だったと思う。
開けてみると御茶ノ水博士のバッタモノみたいなキャラが
アトムのパチモノみたいなキャラに、

「それは君の頭が三次元の範疇でしか物事を考えられないからだよ。
宇宙の根源的な謎について誰も満足のいく説明ができない原因はまさにそこに
あるんだ。我々はね、例えていうならTVゲームの中のキャラなんだよ」

…まあ、マップのあるゲームなら何でもいいのだが、
例えばドラゴンクエストで、船に乗って
北へ北へと進んでみる。すると…あれれ?元の場所に戻ってしまったではないか?

なんのことはない。つまりゲームのマップを一周してしまったわけだ。
もちろん我々の現実世界でも似たようなことはおきる。
地球は丸いからだ。ひたすら北へ進めばいつかは元来た地点に戻る。

しかし、我々は地球が丸いことも地球が宇宙に浮かんでおり、
空を見上げれば広大な宇宙空間が広がっていることも知っている。

しかし、ゲームのキャラたちはどうであろうか?
もちろん彼らにそんな知性があったと仮定しての話である。
少なくとも2Dゲームのキャラは上を向いて空を見ることなんてできない。
空なんてものは2次元の彼らには存在しないし、概念すらないだろう。
空を飛んで宇宙に出るなんて発想は絶対にできない。

「んじゃ3Dゲームのキャラは?2D横スクロールのキャラは?
上向けば空が広がってるじゃん」

同じである。彼らは決定的に閉ざされた世界にいるからだ。
すなわち「画面の中」という2次元世界にである。
3Dキャラがいくら空を見上げようと、我々の世界、つまり
画面の外を知覚することは決してできない。
(例え彼らのマップが我々の宇宙に匹敵する容量をもっていたとしてもだ)

つまり御茶ノ水博士の言いたいことは、我々も3次元という
閉ざされた世界の中におり、外の世界、すなわち「4次元の世界」を
知覚することも認識することも決して出来ないからだよと
いうのである。

ゲームキャラにとってプログラムされたマップが世界のすべてであり、
原初とはプログラム以前の世界であり、
自身もプログラムでしかない彼らにとっては
プログラム以前の世界のことなど完全に知覚の外であり、
ゲーム機やRAMチップ、CDROMのことや
ましてやそれを作った我々のことなど想像することすらできないのである。

宇宙の膨張はゲームのマップがだんだん拡大されて広くなっていくのだと
イメージすればわかりやすい。
そこには風船のような「中心」も「外側」も存在しないのだから。

なるほど、なんだか少しだけわかったような気になった、
中学生の私がそこにいた。
ありがとう御茶ノ水博士。
だから偉い学者先生たちも神だのなんだのと
持ち出さざるを得なかったわけなんですね。

偉大な御茶ノ水博士(のニセモノ)のおかげで
私は少しだけ宇宙の真理に近づいた。
少なくてもその時点の私はそう思った。
実のところ、大いなる見当違いをしていたのだが、
まあ、中学生の頭ではこのあたりが限界であろう。
数々の謎、すなわち、

「我々の世界が閉ざされた世界であるならば、外の世界、すなわち
4次元の世界はどのような世界なのであろうか?」

「知覚、認識できない世界であったとしても、果たして想像すらできない
世界なのであろうか?人類の英知はそこまでが限界なのか?」

「我々の世界を閉ざしているものはなにか?もし、我々が画面の中の住人でしか
ないとしたら、我々を画面の外から見ているものは神か?」

そんな疑問を残しながら私は高校生になった。
日常生活でこんな屁理屈を熱く語ると思い切り引かれるのだという
ことがなんとなく理解できるようになる年頃である。
しかしやはり4次元世界への関心を失うことができず、
納得できない毎日を悶々とすごすうち、私はある人物と出会うことになった。
現在に至るも私が尊師…もとい!恩師と仰いでいる人物である。
そのあたりのことはまた書くことする。
彼は私の盲を開いてくれたのだ。

…断っておくが私は無神論者である。少なくてもこの世の神など一切信じないし、 
宇宙意志など存在しないと思ってる。
「地球は宇宙気流で回っているのですよ」などとぬかす重病人が知り合いにいるが、
どうか遠いところで幸せになってほしい。
ジョークとしてなら笑えるが、宗教など悪質な集金システムにすぎないと思ってる。
(もちろん信じてる人が救われているのならそのことを非難する気も議論する気もない。
人に迷惑さえかけなければ何を信じるも個人の自由である)
なので、悶々とした私がどこぞのインチキ教団に入信して破滅したなんてオチはない。
話としてはそっちのほうが面白そうなのだがw

つづく。